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安さの代償 ― 「カバーを外さない」エアコン清掃の真実

安さの代償 ― 「カバーを外さない」エアコン清掃の真実

格安クリーニングの流行と、お客様が抱く「本当にそれで大丈夫?」という疑問

最近、お客様から「Instagramで見たんだけど、カバーを外さなくても隙間から洗えるって本当?」と聞かれることがありました。作業時間15分、価格は当店の半額以下。正直、気持ちはよくわかります。同じきれいになるなら安いほうがいい、それは当然の感覚です。

ただ、この仕事を長くやっている人間として、ひとつだけ正直に言わせてください。エアコンの中で本当に汚れているのは、隙間から見える場所だけではありません。

カバーを外さないと、何が見えないのか

エアコン外装カバーを外したことがある方は少ないと思いますが、機種によっては内部はまあま複雑な構造をしています。フィルターの奥には熱交換器(アルミフィン)があり、ここは結露と乾燥を毎日繰り返すため、カビやホコリが層になって積もっていきます。しかも汚れがひどいのは、正面から見える部分より上部や裏側であることも多いのです。ここは、カバーを外さない限り洗浄液も水もまず届きません。

送風ファン(クロスフローファン)も同様です。羽根と羽根のわずかな隙間にこびりついたカビは、外からシュッと洗浄液を吹きかけただけでは、表面がちょっと流れる程度で根元まではなかなか落ちません。

そしてもうひとつ、地味だけれど一番気を使うのが電装部です。制御基板やセンサーがどこにあるかを正確に把握し、そこにきちんと養生(保護)を施したうえで洗浄するというのが、私たちの当たり前の手順です。カバーを外さずに作業するということは、この位置関係を目で確認しないまま水をかけているのと同じことになります。

簡易清掃で起きがちな3つのこと

分解しない、あるいは簡易的な清掃で実際に起こりうる問題を、現場目線で挙げてみます。

ひとつ目は、カビが結局残ってしまうこと。表面のホコリは取れても、フィン奥や送風ファンの根元にカビが生き残っていると、そこから胞子を出し続けます。見た目がさっぱりしても、空気そのものがきれいになったとは限りません。また、洗浄によって流れ出た汚れが外装カバーの内側に留まってしまいます(断言)。

ふたつ目は、故障につながる可能性があること。水の逃げ道や養生の状態をきちんと把握しないまま高圧で洗浄すると、本来水がかかってはいけない電装部に水が入り込むことがあります。すぐには壊れなくても、数ヶ月後に基板が腐食して誤作動を起こしたり、突然動かなくなったりすることは、決して珍しい話ではありません。

みっつ目は、水漏れや詰まりです。洗浄で出た汚水は、本来ドレンパンを通って屋外に排出されるようにできています。ところが内部構造を確認しないまま高圧で洗うと、その汚水がドレンパンの排水経路を塞いでしまい、後日の水漏れや室内への逆流につながることがあります。

では逆に、「完全分解・背抜き」ならいいのか

一方で最近は、正反対の方向に振り切った業者さんも見かけるようになりました。「完全分解」「背抜き」と呼ばれる方法で、エアコンを壁に取り付けたまま、背面ケーシングやドレンパン、電装ボックスまで、可能な限りすべて分解してしまうやり方です。壁に残るのは熱交換器だけ、という状態まで持っていくので、確かに洗浄そのものは非常に丁寧になります。

ただ、これはこれで相応の技術がないと危険な作業です。まず、この工程で配管を外すケースでは、冷媒ガスを室外機側に安全に閉じ込める「ポンプダウン」という作業が必要になります。これを正しい手順で行わないと、冷媒ガスが漏れ出すだけでなく、バルブの締め方を誤ると圧力の逃げ場がなくなり、破裂事故につながる危険性もあると言われています。決して素人が手を出していい工程ではありません。

さらに背抜きでは、配管を完全に外さずに本体だけを引き出す作業になる場合もあり、そのときに配管へ無理な力がかかることがあります。冷媒配管に使われている銅管は柔らかい分、勢いよく曲げたり繰り返し負荷がかかったりすると折れ曲がりや亀裂が入りやすく、それが後々の冷媒漏れにつながることもあると言われています。

また、完全分解には専用の工具と、機種ごとの構造理解が欠かせません。経験が浅いまま無理に分解すると、樹脂製のツメやケーシングを折ってしまうことがあります。実際、完全分解を専門にしている業者のサイトでも「破損した部品は補修対応する」という案内が見られるくらいで、決して珍しいトラブルではないようです。さらに、機種や設置状況によっては、構造上そもそも背抜きに対応できないケースもあります。

つまり「とにかく全部バラせば安心」というわけでもないのです。必要な範囲を、必要なだけ、安全な方法で分解する。私たちが「分解洗浄」という言葉にこだわっているのは、そのちょうどいいバランスを大事にしたいからです。

それでも分解にこだわる理由

正直、分解してすべて洗うのは手間もかかりますし、お客様からすれば「そこまでしなくても」と思われることもあるかも分かりません。それでも私たちが分解にこだわるのは、次のようなことを、自分の目で確かめながら仕事をしたいからです。

熱交換器や送風ファン、ドレンパンといった汚れが溜まりやすい場所を実際に見て、そのときの状態に合わせた洗い方を選ぶこと。電装部をしっかり養生したうえで、安全な範囲でしっかり高圧洗浄をかけること。そして作業の最後に、排水がちゃんと流れているか、異音がないかまで確認すること。

こうした一つひとつが、「見えない部分にも責任を持つ」という、私たちなりの仕事の基準です。安さを追求した簡易清掃でも、無理な完全分解でも、こうした工程のバランスが崩れてしまうことが多いように感じます。

節約ではなく、投資として考えてほしい

金額だけを見て選びたくなる気持ちは、よくわかります。でも、簡易清掃でカビが残ってしまえば、それはご家族の健康に関わる話になりますし、電装部への浸水がもとで故障すれば、数万円から場合によっては十数万円の修理費がかかることもあり得ます。

エアコンクリーニングは、単なる「掃除代」ではなく、ご家族の健康とエアコンそのものの寿命を守るための投資だと、私たちは考えています。その投資に見合うだけの仕事を、これからも技術と誠実さでお返ししていきたいと思っています。

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